現代日本の開化 夏目漱石
- 2011.12.04 Sunday
- 03:46
今日は夏目漱石の『現代日本の開化』を紹介します。
さいきんめっきり肌寒くなってきて、真冬の様相を呈して来ましたが、いかがお過ごしでしょうか。
これは夏目漱石が真夏に行った講演会の記録です。
漱石がこの講演を行った頃は、西洋文明が日本にどんどんと流れ込んでいた時代です。2011年と同じく、時代の節目だったわけです。漱石はその先頭にたって英語や英国文学などを多くの学生に教えています。西洋文化を取り入れる時に、いったい何に注意していればよいか。そういうことを熱心に考えていたのが漱石です。
文化や情報が一気に入ってくるということは、役に立つと同時に、害そのものでもある、と漱石は述べます。ちょうど、インターネットを盛んに使い始めた時代にも似ているかもしれません。文明の開化は、人間活力の発現の経路である、と漱石は言います。
漱石が現代に生きていたら、十年くらい前にwikipediaの到来やフランスでのブログ文化などを熱心に語ったかもしれませんね。ネット環境はものごとを手軽にするかわりに、人を横着にさせる。漱石は文明の進化によって、できるだけ義務を楽にしたいという横着な技術が発展すると予言していますが、まさに21世紀はロボットが自動車のように現実社会にあふれかえることになりますから、鋭い指摘です。
漱石は文明が進化するほど、歩くのも省略したいし自転車や自動車や飛行機などが発達していって、とにかく義務を楽にして、道楽ばかりに集中したい、という人々が増えると予想しています。日本の未来をかなり的確に言い当てていますね。自動車産業とゲーム産業はほとんど世界一、というのが日本ですから。義務を軽減して、道楽に集中したいという日本人の性質を完璧に見抜いています。きっと今後の日本ロボット産業もどんどんこの方針に近づいてしまうんじゃないでしょうか。
漱石はこの発展に対して、強い疑問を投げかけます。自動車産業の偉大な発展が本当に私たちの暮らしぶりを安定させたのか。いや、むしろ不安や不和を増やす結果となってしまった。打ち明けるなら、文明が発達しているのに苦しい境遇に見舞われる人はむしろ増えてしまった。文明の進化は生存の苦痛を和らげない。むしろ増大させている。生存競争から生ずる不安や努力に至ってはけっして昔より楽になっていない。ここで漱石は、老子のように、心理的苦痛の増大へと突き進まない方針を説きます。漱石は、日本の開花が、外発的であると指摘しています。これも日本の現代社会とぴったりと一致しているように思います。
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