赤ずきんちゃん グリム兄弟

  • 2011.06.06 Monday
  • 15:48


今日はグリム兄弟の《赤ずきんちゃん》を紹介します。

グリム童話ってけっこう残酷です。「えっ、これどういうオチ?」というような怖い結末がけっこうあります。だからこそというか、結末がどうなるか判らないので興味深く読めるわけなんですが。この話はなんというか、イメージがすごく鮮やかというか、象徴的というか、いつまでも記憶に残ります。




【赤いずきんの少女/おばあちゃん/なんでも飲み込むオオカミ/石/お菓子とぶどう酒】




一つ一つのモチーフがとても絵画的です。セザンヌやピカソがこのモチーフを描いたらどうなるんだろうか、とか空想します。或いは安部公房がこの小説をモチーフにして書いたらどの部分を掘り下げると思いますか? または推理作家がこれを書いたら、どういうトリックになるんでしょうか。あるいは少女マンガ家だとどの部分で楽しませてくれるのでしょうか。なんだかとても象徴的な粗筋とモチーフに思えます。これってでも、少女が主人公なわけで、男がこれを読むと、どうしても自分がオオカミや猟師だというような感覚で読んでいくことになるわけですが。




これは冒険譚の基本形である、当たり前の世界から、非現実の世界へと行って、そうして元の世界へ帰ってくるという話しです。

行って帰ってくる。
ウィトゲンシュタインという哲学者はこの「行って帰ってくる」という運動を最重要視しました。立脚点はあくまでも現実の世界であり、そこからどんどん意味が成立しない危機的な状況の解析へと進んでゆきます。そしてどこまでが人間の理解可能な領域で、どこから先が語りえぬ領域であるかを明確化しました。




ウィトゲンシュタインはこのように述べています。

ひとの知ることはすべて三語で語られうる。他はただざわめきや喧騒が聞こえたにすぎない。(キュルンベルガー)

◎哲学というのは、ハエ取り壺にはまってしまったハエに、ハエ取り壺からどうすれば出られるかを教えてやるようなものだ。

◎私を理解する人は、私の命題を通り抜け、その上に立ち、それを乗り越え、最期にそれがナンセンスだと気づく。そのようにして私の諸命題は解明を行う。(いわばはしごを昇りきった者は、はしごを投げ棄てなければならない)

◎哲学における諸問題は、思考の限界を超えている。

◎「ある事態が思考可能である」とは、その事態の代替物(箱庭または像)を用意できるということだ。

◎論理はアプリオリ(先天的)である。(哲学は経験に先立つもののみを扱う)

◎思考の限界を捉える時、我々は「以下同様」という言葉に出会わなければならない。

◎およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、ひとは沈黙せねばならない。



参考文献
論理哲学論考 (岩波文庫)ウィトゲンシュタイン (著)
ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む (ちくま学芸文庫) 野矢 茂樹 (著)  
ウィトゲンシュタインの「はしご」 吉田寛    ナカニシヤ出版



ウィトゲンシュタイン哲学を抜粋で説明するのはかなり無理がありますが、ウィトゲンシュタインは微細に専門化する状況において、意味が失われて、泥沼に嵌っている人々に「判りやすい全体像」を提示し、当たり前の世界へと帰ってゆく道のりを指し示します。




ウィトゲンシュタインは「単に無意味な言説を、あたかも価値があるかのように述べ続けている哲学の諸問題」を「論じえないこと」として無意味化しました。
そうして語られるべきであるにもかかわらず語りえぬことについてを、沈黙の内に受け入れようとしました。




小説はもちろん哲学と異なっていて、無意味な世界についてを楽しむこともできます。

行って帰ってくる。
遠い世界へと赴き、現実へと帰る、というのが僕は好きです。

このグリム兄弟の《赤ずきんちゃん》は、非情の世界から日常へと帰る、という
基本的な展開があってすてきです。




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