藪の中 芥川龍之介

  • 2011.07.11 Monday
  • 16:37


今日は芥川龍之介の《藪の中》を紹介します。総ベージ数約20枚ほどの掌編小説です。
僕は芥川龍之介の小説の中で、この小説にもっとも興味を抱きます。芥川龍之介といえば短編の名作が多く「蜘蛛の糸」「杜子春」「トロッコ」「仙人」などが有名で、普段まったく小説を読まない人でも一作は読んだことがあるんじゃないかと思います。芥川龍之介と言えば、ぼくはもうこの「藪の中」がもっとも気になるんです。




「藪の中」というと事件の真相が全く判らないという意味ですが、この小説が元になって「藪の中」という言葉が出来たわけです。




藪の中で殺人事件が起きる。
いったい誰が殺したのか分からない。調べれば調べるほど、本当は誰が殺したのかが分からないんです。遺体を目撃した樵(きこり)は、強盗殺人ではないかと述べる。さまざまな証言者が出てきて、犯人がおおよそわかってくる。
その犯人である多襄丸が「私が殺した」と述べる。
ところが、殺された男の妻が現れて「夫を殺したのは多襄丸ではない、私が殺した」と述べる。
一つであるはずの真実が、どうしても一致しない。
最後に、殺された男が、巫女に乗り移って証言する。
するとこれまでとはまったく違う事実が明らかになる。
五人が見た真実がいずれもまったく異なっている。
「判らない、ということが明らかになり、判らないことが判る」という物語です。




この小説は、戦後日本の映画史にもっとも明確な指標を作りあげた、黒沢明の映画「羅生門」の原作そのものです。映画「羅生門」の脚本は橋本忍で、この「藪の中」という陰惨な物語を、みごとなまでの希望の物語に書き換えていて、黒沢明はカンヌ映画祭でグランプリを受賞します。黒沢明と橋本忍は、藪の中という物語を借り受けながら、陰惨な事件があったことを明確に述べながら、しかし、これだけはゆずることの出来ない希望である、ということを一つはっきりと描き出しています。この芥川龍之介の「藪の中」という原作を読んで、どうしても映画が観たくなったら、レンタル屋さんで黒沢明の「羅生門」をぜひどうぞ。







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