家霊 岡本かの子

  • 2011.11.10 Thursday
  • 00:01


今日は岡本かの子の『家霊』という掌編小説を紹介します。これは、岡本かの子の代表作といわれるものです。




なんだか福田平八郎の日本画のような、どこかで確かにこんな絵を見たことがあったような気がする、記憶の中へと入りこんでゆく物語です。情景がありありと思い浮かび、いつまでも消えない印象がのこるというのがこの小説の魅力のように思います。




ほんのすこしだけあらすじを書きますと、主人公はつい最近、母親のかわりに“どじょう屋”につとめはじめた娘のくめ子です。食事代を払えないほど貧しい、老いた彫金師が、どじょう汁を食べに来る。長生きによい、滋養がある汁を啜りに来る。このご老人が母となにか深い縁があった。


続きは本文をお読みください。




桜 岡本かの子

  • 2011.10.09 Sunday
  • 15:54


今日は岡本かの子の短歌集「桜」を紹介します。
桜は4月で、今は10月ですが。あと1ヶ月ほどで紅葉の季節です。




小説家の短歌集って現代では珍しいように思います。
若い美術家が自然を描かなくなったと言われて久しいですが、
小説の世界でも、自然界が主役と言えるような小説を書く人はかなり少なくなっている気がします。実際に自然が豊かな場所に住んでいないと描けないのかもしれません。




万葉集などでは恋愛の感情を自然に託して描いていますよね。
あの作家の、短歌集を読んでみたいと思う今日この頃です。





娘 岡本かの子

  • 2011.10.08 Saturday
  • 01:19

今日は岡本かの子の「娘」を紹介します。

ついこのあいだノーベル平和賞が発表されて、民主化が遅れる地域で女性の地位向上に尽力したとして3人の女性がこれを受賞しました。なにかこう、理想的な活動をしている人の気持ちというのはどういうものなのだろうか、などと思います。


人によって仕事の理想はかなり違いますよね。ある人にとっては喜んでもらってなんぼだとか。ある人にとっては楽でお金が入るタイプが良いんだとか。ある人にとっては汗水垂らして体を動かして対価とやりがいを得ないと理想的な仕事とは言えないとか。ぼくの場合は、創造的な仕事をしたい、というのが理想なんですが。


この掌編小説には、理想的な「自由」というものを手に入れたい少女の気持ちが生き生きと描き出されています。ボートを通じて、室子という少女は自由を実感したいと思う。それで見知らぬ異性がふっと割り込んできて、その男と自分とのあいだに、たしかに自由を感じる、という話です。「映画というのは30分番組くらいの濃さのストーリーをじっくりと2時間追いかけられるようなものに出来たなら、それが理想的だ」というような話を聞いたことがあるんですが。このごく短い物語を2時間ものの映画に作りあげられたらずいぶん爽快な映画になるんじゃないかと思います。ほんの30枚程度の掌編小説です。ぜひお読みください。


愛よ愛 岡本かの子

  • 2011.07.22 Friday
  • 12:35

今日は岡本かの子の「愛よ愛」を紹介します。ほんの3ページほどの掌編ですから、ぜひお読みください。岡本かの子の文章は、全体の中のたった一文でもイメージが広がります。すごいですよね。


7行目あたりにこんな文章があります。

おいおいたがいに無口になって、ときには無口の一日が過(すご)される。けれども心のつながりの無い一日では無い。この人が眼で見よと知らする庭の初雪。この人が耳かたむける軒の雀(すずめ)にこのわたしも―




というのの雀(すずめ)のイメージがなんか良いです。小野竹喬の絵画みたいです。自分でもこういう文章表現をやってみたいと思うんですが、どうもうまくいかない。たぶん実際にそういう事実にポンと突き当たってから書いているから上手く書けるんじゃないかと思います。「僕も同じようにしてみたい」と思うのですが、そう思って書いてみるとどうも不自然ですから、うまく書けない。

恋愛といふもの 岡本かの子

  • 2011.07.06 Wednesday
  • 07:50
 

今日は岡本かの子の『恋愛といふもの』という随筆を紹介します。
3ページほどの、掌編です。
岡本かの子といえば、岡本太郎の母であります。岡本かの子の短編集は、まるで随筆のように描かれていて、これは作者の創作なのか、それとも日記なのか、区別がつかないところがなんだか魅力なんですが。




ぼくはどうにもあり得ないことを書いている物語よりも、作者がほんとうにそういうことを思っているんだろうなというふうに感じられるエッセーや随想が好きなのです。小説を読んでいても、作者の顔が見えてくるようなそういう手触りのあるものが良いなあと思うのです。これは甘いお菓子と苦い紅茶を連想させるようなエッセーです。あと味はけっこう苦い。






岡本かの子 愛

  • 2011.05.14 Saturday
  • 00:01
今日は岡本かの子の《愛》を紹介します。
ほんの3ページの掌編小説ですから、どなたでも最後まで読めますよ。
最近すこし忙しいです。忙しいという文字は、心を亡くすと書くんですよねえ。のんびりしたいです。ちょっと前までは誰にも会わず、誰とも話さず一人でのんびりと生きていたのですが、最近はなんだかすることが多いのです。ふだんはただボーッとしていれば良かったんですが。なぜかそういうわけにもいかなくなってきました。のんびりする時間ができれば、また何もしない時間を楽しみたいわけです。最近はなぜかは判りませんが、あれやこれやと問い合わせを受けます。新幹線が僕の体内を開通したような気分です。



岡本かの子というかたは、太陽の塔をつくった芸術家・岡本太郎の母です。小説と本人とは別だ、とは思いますが、それにしてもこの掌編小説はまるでエッセーのように記されていて、本当のことを書いているように思えます。作者岡本かの子の波瀾万丈な人生が詰め込まれているようで、なんだか気になります。こんな激しい女に愛される男は、いったいどんな人なのか、ということに興味を抱いて読んだのですが、最後に〈ビスケット〉という言葉がポンと投じられていて、それがなんだか印象的で好きになりました。



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